無邪気でおとなしい少女おすすめ度
★★★★★
ドロシーはカンザスの草原で農夫のヘンリーおじさんとエムおばさんといっしょに暮らしている少女でした。
ある日竜巻で家ごとふきとばされて、遠くマンチキンの国におりたちます。
良い魔法使いからおでこにキスをもらい、魔女の銀の靴をはいて、子犬のトトといっしょに偉大な魔法使いの居るオズの国を目指します。「願いはカンザスに帰してもらうこと」
途中で脳みその欲しいかかし、ハートのほしいブリキのきこり、勇気のほしいライオンといっしょになり、協力し合いながら道を進んでいきます。
子どもの頃とても面白く読んだのですが、あらためて大人になってこの文庫を読んでみると、やっぱりすごく面白いです。
悪い魔女のうえに家が落ちてしまったことにモジモジする様子や、竜巻で飛ばされた家にきちんと鍵をかける様子など、
「ドロシーのいかにも普通の女の子の動作」
が共感もって楽しめます。
かかし も、キコリも、ライオンも本当に人が良くて、「楽しい道連れだな」としみじみしました。
とても楽しい童話です。
新井苑子さんのイラストもとても素敵で、本当に楽しませてもらいました。
アメリカ児童文学の古典
おすすめ度 ★★★★★
「自分にはできない」と落ち込んだりあきらめたりするのは思い込みであったり、全力をつくしてないだけかもしれない、と思わせてくれる作品です。皆で勇気と知恵を出し合えばきっとできると勇気付けられます。 オズシリーズは全14巻で、ボームの死後も数人の作家によって続編が書かれるほどの大人気の作品です。1900年に出版され大ヒットとなり、続編をとの子供たちの要求に応えて、ボームは毎年クリスマスシーズンに一冊ずつ出版し、アメリカの子ども達はクリスマスにオズの本を楽しみにしていました。 ボームは序文で“子供達を喜ばせることのみを目標とする”と書いているように、これまで子供のために書かれたお話特有の教訓や道徳性を強調するのではなく、新しいおとぎ話を作った人物です。彼のスタイルは全く新しく、世紀転換期に出された彼の序文はアメリカ児童文学の独立宣言とも言われています。それにも関わらずファンタジーは子供によくないとされ全米の図書館から姿を消した時代もありました。しかし100年たった今でも世界中で愛されアメリカではクリスマスシーズンには映画が毎年放送されるほど古典になっています。どんな苦難にあってもめげることなく前へ進んでいくドロシーはアメリカの開拓精神を象徴し、今まで少年がするものだと思われていた冒険を少女がやるといったフェミニズム的にも読め、児童文学とはいえ多角的に読むことができるので大人でも楽しんで読めます。原書も高校英語レベルで読めるので、英語を学んでいる方へもお勧めの一冊です。小さい時に読んだことがあるという方も是非もう一度読んでみてください。