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+ 幻の光 +

幻の光

是枝裕和
おすすめ度:★★★★★
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網膜に残る抽象的ドラマ
おすすめ度 ★★★★☆

アップの少ない画面。画面のトーンも暗く、テレビモニター画面だと、さらに表情もよくは伺うことができない。
しかし、それがマイナスかと言うと、意外にそんなこともないのだ。
抽象的なドラマの雰囲気がより抽象的になって、妙に心に残ろうとでもするかの画面だ。

多くが遠目のシルエットで静かに語られるスタイル。
それがこの映画では印象的に網膜に残るようだ。
それは登場人物の心の中がそのまま風景になったような画面ということだ。
言葉による説明もほとんどされないので、彼らの行動の動機も想像力を要求する。
しかし、想像すること、じつはそれを空しく思う。
そんな心の情景を嫌と言うほど知っている人、馴染んでしまっている人にとっては、ということかもしれないが。
説明できない人の心の軌跡を描いていると思えば、ラストに近い主人公の言葉にされた「長い間の問い」も、もしかしたら必要なかったかもしれない。



イノセンス
おすすめ度 ★★★★☆

江角マキコ初主演作であるが、僕は子供たちの自然な姿ばかりに目が行ってしまった。
「誰も知らない」でも感じたことだが、是枝監督というのは、自然体の子供の行動や会話を撮るのが異様にうまい。その無垢なイノセンスの潔さ、不可思議さというのものは、大人を時にハッとさせてしまう。自分が大人になってしまったという喪失感。それをこの映画から感じた。

なお、江角マキコの子供時代役で、吉野紗香がひっそりと出演していた。これも是枝監督の特徴だが、俳優の顔をしっかりとは決して映さない。特にチョイ役については、クレジットを見ないとなかなか分からないほどだ。吉野紗香もこれが映画初出演のはずだが、こんなにシリアスな映画でデビューしていたとは驚いた。



空と海に挟まれた人間
おすすめ度 ★★★★★

この映画のロングショットはものすごい。
ビデオでは人間の姿が見えるか見えないかというところだ。
しかも画面が暗いから撮影に当たってはかなりの工夫が必要だったのではないか。
ロングショットは人間の運命の神秘を映し出す。
暗い風景の中で遥か遠くに捉えられた人間の姿に、非常に美しい音楽が
かぶさって未曾有の傑作となっている。



叢に灯る乾いた葬列
おすすめ度 ★★★★★

深く密かに渦巻く感情を、静寂とも寂寥ともとれない白い静けさで
ひっそりと撮り続けたような、是枝監督の最高傑作。

幼い頃、死に場所を求めて失踪した祖母。
幸せのさなか、線路の向こうに果てた夫。
自分が掬いきれなかった家族の死を抱えて生きる主人公を
感情のない眼でカメラが追います。

素晴らしい構図、長回し、音楽、演技も去ることながら
尼崎の濡れたような夜、輪島の乾いた厳しい冬の風景が
この上なく美しく切り取られ、主人公の心象風景となっていることが
この映画をここまで崇高にしているのだと思います。

特に後半で、粉雪の舞う海沿いの荒れ野をゆく短い葬列は、
叢にともる 乾いた黒い灯火のよう。
主人公がその後を誘われるようについてゆくシーンは圧巻。
冬の海で岩肌に焚かれた火の隣に佇む小さく黒い姿が
主人公の心の内を全て物語っており 恐ろしいまでに見事。

邦画は全く見なかったのですが、この映画だけは特別。
見えない大きな力と感情に突き動かされて、
最早 涙も出ず 歯を食いしばるばかりでした。
機会があったら、是非 ひとりで
部屋を暗くして 観てみて下さい。@


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