いつの間にかベテランと呼ばれるようになり、「カズは終わった」とメディアで言われる中、ヴィッセル神戸へと移籍し、さらに横浜FC、シドニーFCと戦いの場を変えていった彼が何を考え何を伝えたかったのか…、その答えが本書に記されています。
サッカーに対する思いや考えはもちろんのこと、当時の世の中での出来事への意見などが語られており、常に物事を前向きに捉え目標に向かって走り続けて行く彼のひたむきな姿を知ることができます。
サッカーファンなら買うべしおすすめ度
★★★★☆
2001年4月から2005年7月まで、彼が新聞に寄稿していたコラムを書籍化したものです。
とても真摯な内容で、彼のサッカーに対する情熱や愛情、日本代表への想いや誇り、
そして人生観までもが飾り気の無いシンプルな文章からストレートに伝わってきました。
また、彼の貴重な体験談や、彼を支えたり影響を与えてきた友人知人へのリスペクト、
そしてJリーグやサッカー界とそれを取り巻くメディアやファンへの問題提起、
さらにはサッカーとは直接関係ない現在社会に対する意見なども多く、興味深く読むことが出来ました。
カズのファンじゃなくても、サッカーファンなら一読に値すると思います。
ただ、「カズのサッカー人生を知りたい!」と言う人にはお勧めできないかもしれません。
随所に過去の経験談が散りばめられてはいますが、彼の人生を順を追って記述している内容では無いので御注意を。
それと、おはぎ職人との対談やシドニーFC移籍前後の心境など新たに加えられた部分があるものの、
本編自体は彼の公式HPで公開されていた内容なので、そちらを見ていた人には既出感が強いかもしれません。
「サッカー」+「おはぎ」=KINGカズ
おすすめ度 ★★★★★
それにしても、度肝を抜かれるタイトルとカバー写真である。その名も『おはぎ』。一体全体なんで『おはぎ』なの?と思われた方も多いだろう。さて、この『おはぎ』であるが、サッカー界のKINGこと三浦知良選手の初エッセイである。自らを「全国おはぎ協会会長」と自負するくらいに「おはぎ」が大好きというシンプルな理由から、本のタイトルを『おはぎ』としたらしい。公式プロフィールにも「好きなもの:おはぎ」と書いているので、相当な思い入れがあるとみた。本の中の至る所におはぎの写真が載っていて、なんだかお茶目な感じも伺える。肝心な中身はというと、以前に新聞に掲載されていたエッセイを中心に構成されている。過去約4年分のエッセイからは、カズのサッカーへの愛情や真摯な思い、また自身の生活についてなど、その時々の心情を伺い知ることができる。またカズ自身の心境変化なども読み取れるように思う。その他にも、カズとおはぎ職人との対談や、異色な組合せとも思えるテリー伊藤氏との対談もまとめられ、これらも興味深い。テリー伊藤氏との話の中には、ブラジル留学中のエピソードも出てきており、以前にカズの人生を描いた『足に魂こめました』(文藝春秋)を読んだ自分にとっては、とても面白いものだった。また、本の随所には、カズの好きな物の写真などが散りばめられているのも、なかなかステキだ。小さな写真がいくつか収められているが、これもよく見てほしい箇所だ。2005年の1年間で、J1ヴィッセル神戸からJ2横浜FCへ、そしてシドニーFCへの期限付移籍と、その活躍の枠を広げているカズだが、最近は特に「旬の中の旬」を迎えているような気もする。そんな「サッカー職人三浦知良選手」をより深く知ることができる旨味のある1冊。サッカーファンには特にオススメ。