三浦涼介だけを観る作品 おすすめ度 ★★★★☆
賛否両論分かれる作品だが、辛口意見が集中するのは概ね作品全体に漂う安っぽさであるようだ。そもそもアカラサマに「三丁目の夕日」を意識した作品であるにもかかわらず、見るからにチープな映像にチープな脇役というのでは単なるパロディや便乗作品というそしりを受けても仕方がない。
昔劇場公開からまもなく発売され、似たような題名に思わず買って騙されたニセモノビデオを思い出してしまう。
例えば、時折挟まれる当時のフィルムはこの場合逆効果だ。せっかく脱CGを謳って、現代に残る昭和の風景を探しぬいてロケを張ったのに、当時のフィルムが入るせいで「なんだ(当時を)結局再現しきれなかったのか」という気にされてしまう。CGを一切排した挑戦的な作品と期待していただけに、これでは台無しだ。
また時代考証もズタズタで、抗議の貼り紙を剥がすこともせず平気な顔でその場所で女給が働いている。それについての説明もない。
そしてこういった不自然を放置する脚本が致命的だ。伏線として用意されたきっかけがなんと放置されたまま作品が終わってしまうのだ。慌てて書かれた脚本だったのか、それともそういう脚本家なのかはわからないが、これは痛い。噴飯ものだ。
そして脇を固める俳優たちの貧弱なこと。二流俳優を使うくらいならむしろ小劇場俳優や若手の舞台俳優を中心とした布陣もできた(むしろこの作品のコンセプトにおいて、それは不可欠であったろう)はずだが、なぜかテレビ出演経験の二流俳優。これではやはり「制作費の関係だったんだねえ」「本当は一流を使いたかったんだねえ」という印象しか浮かばない。根底からこの作品の真の価値が揺らいでしまう。
いかんせん、実にいいコンセプトだっただけに作品の特筆を生かしきれなかったことが悔やまれる。名作になり損ねた迷作だ。
その中ただ一人、孤軍奮闘を遂げるのが主演の三浦涼介。結局三浦のポイント稼ぎといってもいいような作品に落ち着いている。「彼のための映画」と評する人もいるが、確かにそうかもしれない。昨今ラッシュの安っぽいボーイズラブ作品とは一線も二線も画しており、赤線時代のオカマという大役を見事に演じきっている。「相手を女性だと思って演技しました」などという「最低な」演技プランを練る昨今の低次元俳優と違って、彼の演技に対する姿勢は実に真摯だ。
外見の女の子っぽさを語調や態度に転用するのがとことん下手な彼(「動く」彼は実に男っぽく、無骨な印象さえ受ける)だが、起伏の激しい感情表現は実に豊かで、瞬間の笑みや号泣するシーンはそれを補って余りある。そうした彼の演技が作品全体を支えている、まさに彼を見るための作品かもしれない。だが、それならばもっといい脚本だったら尚と思われて、余計に惜しまれる。もっとも俳優としてのキャリアはまだ浅い彼、今後ますます見せ場のある作品が増えることを期待する意味では、いい一作になったのかもしれない。
昨今では「ギャップ萌え」という言葉もあるようだが、それにしてもあの女性的な外見と男性的な言動のギャップには、少々「萌」えない。
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