ボガードの勘は当たった。おすすめ度
★★★★☆
ダーク・ボガードは、この作品の撮影前に言っています。「この役は魅力的ではない」そして、撮影が始まってからは、「シャーロット・ランプリングは今に大スターになる」と予言しました。
確かにもっともでした。この作品のフリードリッヒはまったく魅力的ではありません。ヘルムート・バーガーの映画だったのですから。主役には違いないものの、ベルイマン作品に常連のイングリッド・チューリンともども、おいしいところは皆バーガーが独り占め。ラストの死は哀れです。また、22才のランプリングの眼!すでに、あの眼はありました。そして、あっという間にスターに上り詰めました。ボガードの勘は見事に的中しました。
この作品で、ボガードは「ベニスに死す」での主役に認められるための、ステップを踏んでいただけなのかも知れません。
概要
ナチスが台頭してきた1933年のドイツ、ルール地方の製鉄王エッセンベック男爵が、その誕生日に支配人のフリードリッヒ(ダーク・ボガート)によって射殺された。すべては男爵の従兄アッシェンバッハ(ヘルムート・グルーム)の差し金であり、その後も一族の者同士、血と愛欲にまみれた争いが続いていく……。
『ベニスに死す』と『ルードヴィヒ』に挟まる名匠ルキノ・ヴィスコンティ監督のドイツ三部作の1編。ワーグナーのオペラ『ニーベルンクの指環』をヒントに、ブルジョワの崩壊と第三帝国の到来を重ね合わせながら、デカダンス色に満ちた映像美学が荘厳に繰り広げられていく。ヴィスコンティ好みのキャスティングや、モーリス・ジャールによる狂気と耽美をあわせもつ音楽の素晴らしさも特筆的。百聞は一見にしかずで、一度は見ておくべき、狂える名作である。(的田也寸志)